音声自社無線を駆使して、時に足を使って道や目標建物を覚え、知恵と工夫で様々な困難を乗り越えて、地域の足を守り続けてきた自負がオペレーターたちにありました。しかし、いよいよ限界を迎えようとしていました。オペレーターの一人が高齢により戦線を離脱しました。ただでさえ人員を切り詰めた会社で穴を埋めるのは社長しかいませんでした。社長は早朝から配車室にこもり、日中は運行管理や整備管理をこなし、僅かな仮眠の後、夜の配車に臨む。こんな日が週に数日訪れるようになりました。

​さらに昨今、ネット物流倉庫の乱立、新しい高速道路の建設、こうした都市部の目覚ましい変化により、自社無線の不感エリアが拡大していました。加えて、アンテナの改修が急務であったが、古い設備への再投資もコロナ後のタクシーの将来性を考えれば躊躇されました。

こうした時に、タクリーチが道を拓きました。陰極まって陽に転ずるまさにその瞬間の老舗タクシー会社の軌跡を追いました。